2003.05.11UP

1 基礎データ

授業作りカード

状況

日時

 2003年5月28日2校時目9時35分開始

学習者

 岩見沢市立美園小学校1年生36名

指導者

 柳谷直明

領域

 〔第1学年及び第2学年〕C「読むこと」

学年目標

 書かれている事柄の順序や場面の様子などに気付きながら読むことができるようにするとともに,楽しんで読書しようとする態度を育てる。(小学校学習指導要領国語「1目標(3)」)

指導事項

 時間的な順序,事柄の順序などを考えながら内容の大体を読むこと。(小学校学習指導要領「2内容,C読むこと(1)指導事項イ」)

言語活動

 説明文(を読む)

題材名

かくれて いるのは なに

準備

 教科書の写真のカラーコピー(パネル化)。平仮名プリント。宿題プリント。

授業目標

(評価規準)

 進んで説明文を読み,問いと答えの順序に気づき,それを使って発表する(こことができる)。

 

評価基準

関心・意欲・態度

 進んで授業に参加することができる。

認知化

 「説明文」,「問いと答え」。

行為化

 読解,発表,口頭作文を行う。

技術化

事前

 準備段階−音読(斉読,文読,文節のはさみ読み),問いと答えを読み取らせる。「問いと答え」を入れたクイズを発表する手続きを知らせる。

実行

実行段階−「あいさつ,名前,目的,約束,問い,答え,お礼,あいさつ」の形式を使って,自分で練習する(自己評価)。隣の人に評価してもらう(相互評価)。参観者に聞いてもらう(他者評価)。

事後

評定段階−口頭作文(2文)を発表する。

獲得化

 「説明文」には「問いと答え」があった。

題材理解

 かくれる虫のお話。

達成感

 「問いと答え」を発表することができた。

 

評価方法

関心・意欲・態度

 自己評価。

認知化

 自己評価。

行為化

 教科書記述評価。観察評価。自己評価。相互評価。作品評価。

技術化

事前

 観察評価。教科書記述評価。

実行

 自己評価。相互評価。他者評価。

事後

 作品評価。

獲得化

 相互評価。

題材理解

 他者評価。

達成感

 自己評価。

学習用語

活動定義

 「説明文」とは「説明する文の集まりのこと」である。

活動目的

 クイズ大会をしよう。

活動論理

 発表の手続き。

活動技術

 ゆっくり,はっきり,ていねい。

活動内容

 問い。答え。小さいや,ゆ,よ。質問。挙手。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






 

2 授業価値

2−1 なぜ,言語活動から決めるのか

国語の授業方法は何か。国語の授業方法は明らかである。

 

二六年度版[1]では「言語経験を通じて、ことばの働きを身につける」と記されていた。三三年度版[2]では「活動を通して」指導すると記されていた。新学習指導要領では「言語活動を通して指導する」と記されている。[3]このように戦後の国語教育の中で昭和五三年から平成一四年までの間を除くと「言語経験」や「活動」や「言語活動」を通し事項を指導するという方法が示されている。[4]

 

このように,国語科教育の授業方法はかなり安定している。問題は言語活動の例示が少ないことである。全ての国語の授業でこの方法を用いるとすると,仮に一つの言語活動で10時間を使ったとしても,小学校6年間の1377時間の授業において言語活動を通して行うとすると130程度の言語活動が必要なのである。現行学習指導要領では言語活動の例示が行われた。しかしその数は27程度である。これでは「言語活動を通して」という方法が成立しない。

そのために学習指導要領には次のように書いてある。

 

示された言語活動例だけを取り上げるのではなく,ねらいや指導内容に応じ,児童の実態に即した創意ある言語活動の工夫が必要である。[5]

 

このように,学習者の実態や国語科以外の必要性から言語活動を決める。国語の教科書だけに依存していてはいけない。特に音声言語教材や作文教材は使えないものが多い。例えば,特別活動などで自由研究の発表をさせる前にメモを見ないでスピーチする授業が必要なのである。それは特別活動で指導してもよいが,音声言語の授業としてまずは国語科で行う必要がある。すると,教科書教材だけの配列で教育課程を編成することはできないのである。

しかし本単元では教科書教材を用いる。1年生は,教科書が好きだからである。低学年のうちは,教科書をじっくり使わせた方がよいだろう。

 

2−2 なぜ「説明文」を扱うのか

1年生の実態は,論理的に話すことができない。これまでは私的な言語運用を行ってきている。家族とか友達などとの私的な話のために言語を運用してきている。学校教育では公的な言語運用をたくさん経験させたい。授業中の教師や友達との話し方も,丁寧な話し方をさせるべきである。そこで,公的であり,論理的な話し方を身に付けさせるために「説明文」が適切な言語活動である。「説明文」の読解から,話し方,書き方へと発展させる。

 

2−3 「説明文」で扱う「国語学力」とは何か

私は「説明文」で扱う「国語学力」を次のように提案した。少し長いが引用する。

 

「読むこと」では物語文や説明文がテクストとして扱われる。具体的には説明文で扱われるメタ言語とは何か。まず説明文を成立させている「要素」と読解の主な手続きとしての「読解」という系統に区分した。しかし厳密な区分にはならない。どちらかというと「要素」が「学習用語」の内容面に傾く「メタ言語」であり「読解」が「学習用語」の手続き面に傾く「メタ言語」である。

要素→背景(筆者,題名), 目的,筆者の意図,説明対象,説明順序(時間,事柄,場

所,接続順番)。

→論理(段落相互の関係「話題提示,問答,説明,結論,具体例,数」,理科的「目

的,原因,実験,観察,結果,考察,資料」,社会科的「(結論,根拠,推論,図,

グラフ)」

同じ説明文でも理科的な内容と社会科的な内容ではメタ言語が変わる。論説や意見や記録など文種により更に変わる。「読解」するためのメタ言語は更に増える。

読解→キーワード(要点、使用回数、接続語、指示語、分類)

→ナンバリング(要素の数字化)

→要約(問と答、主張、要旨)、 図〈四角、矢印、ベン図〉、図表(個条書、中黒、

関係図、樹形図)

これらの言語を説明文にカテゴリー化する。したがって,これらの「メタ言語」となる「学習用語」を使うことにより「説明文を読解する」という言語活動を成立させる。[6]

 

言語活動を通して授業行うためには,学習者が言語活動を適正に行うことができなくてはいけない。そのためには指導が必要である。言語活動を適正に行うために必要な手続きをきちんと指導しなくては,言語活動を学習者が扱うことはできない。例えば,いきなりみんなの前に立たせて「スピーチせよ」と命令したところで適正にできるものではない。これが「活動あって,指導なし」といわれる状態である。子供にいやな思いをさせるだけである。

そこで,上に示した<学習用語>から,学習者の実態にとって必要なものだけを厳選するのである。1時間に1つ程度の<学習用語>を子供たちに与える。そして適正に活動させる。

 

2−4 1年生でもできる,プレゼンテーション[7]

「説明文」という言語活動は,「読むこと」と「書くこと」という行為を指す。「説明文」の読解は文字言語を「読む」という活動になる。また「説明文」の形式を用いて「書く」という活動も「説明文」という言語活動に含まれる。「読む」活動から「書く」活動への系統である。ここでは「説明文」を読むという言語活動を通して「問いと答え」という<学習用語>を行為化させる。こういにより言語が身に付いたということができるからである。行為化させる方法は,「問いと答え」と指摘することだけではなく,プレゼンテーションの基礎として音声言語活動へ系統化させる。更に口頭作文として作文の初期指導へと系統化する。

3 授業計画

6時間使い。本時5時間目。詳細は「国語科言語活動方法カード」の「授業方法」参照。

4 本時の位置

 「説明文」を使い「音読」,「読解」,「発表」,「口頭作文」という多様な言語活動を体験させる。そして,それぞれの言語活動で「問いと答え」を知識として理解させ行為化させる。

5 本時

5−1 目標 

「説明文」の音読,読解,発表,口頭作文を通して「問いと答え」を適正に行為化させる。

5−2 展開

過程

学習内容

備考

 

10分

言語活動1「音読」

全員音読1回。指導事項は拗音(イ段の仮名に小文字の「や」「ゆ」「よ」を添えて書く「きゃ」「ちゅ」「しょ」など)などの読み方。

節音読(評価1)。1文音読(評価2)。音読テスト(参観者。評価3。評価基準−拗音などをはっきりと発音することができる)。

開始と終了を守る。つまり授業時間に遅れない。

教科書の音読をして準備して待つ。

板書の筆順,手書きの筆順に注意する。必ず確かめる。

準備物を用意する。今回はプレゼンテーション用のパネルを5枚。

診断的評価。

発表の自信 人。意欲・関心 人。

全員を評価する場面を取り入れる。

評定は,必ず個別に行う。できない子もできるようにする。評価して指導することを繰り返す。

発表は,数時間かけて全員にさせる。

総括的評価(意欲の自己評価)

できるようになった。 人。

進んでやった。

人。

2 展開

20分

言語活動2「読解」

「なに」(代名詞)−はっきりしない事物について問う語。(他に福祉,感動詞などの場合がある。)

「か」(副助詞)−はっきりしない。(他に推量,不確かな断定,質問,反語,感動,命令などがある。)

発問 1文目と2文目で同じ言葉は何か。

発問 なぜ,同じ言葉が並んでいるのか。

発問 「なに」って,どんなときに使うのかなあ。

「なに」が問いであり,「しゃくとりむし」が答えである(評価4)。

「どのように」が問いであり,「はねを とじる」が答えである。

言語活動3「発表」

発問 みんなは問いを使ったことはないですか。

発問 クイズの練習をしてみよう。

「あいさつ,名前,目的,約束,問い,答え,あいさつ」の手続きを伝える。そして対話によって習熟させる。

自己評価(評価5)。相互評価(評価6)。他者(参観者)評価(評価7)。教師評価(評価8。合格シール)。

 

10分