2006年9月13日UP

 2006912日(火)『きつねのおきゃくさま』4時間目 柳谷直明の授業記録 

 

 始業前。準備が出来た人から音読をしている。

 

 1 平均点90点を超える漢字指導

 

  ① 姿勢を正して,礼。

 

1 はじめ。

 

  ② きつねのおきゃくさま,・・・

 

2 何言ってるの? 「細い糸」からでしょう。テストするよ。

 

3 全員起立。読み方を先にちゃんと聞いてもらいなさい。

 

 班での学び合いの学習である。読み方を聞いてあげている。確かめをし合っている。「細いの細,って書ける?」「合っている?」などと教師は個別指導をしている。全体指導は無い。子ども達は「読みテスト」を終えたら「空書き」で確かめ合っている。

 

 板書

 

 一 漢字 

・読みテスト

 ・掌書き

 ・空書き

 ・書きテスト

 

空書きの怪しい子を評価している。「おいおい,テストしてあげなさいよ。」「魚市場の場,って難しいよ。ちゃんとみてあげなさいよ。」などと個別指導をしている。

 

授業開始から8分が経過した。

 

4 ノート。いい加減にこのやり方を覚えなさい。最初,「読みテスト」を班全員で確かめなきゃだめだ。そのあと「(てのひら)書き」。次に,「空書き」で確かめて「書きテスト」。家で勉強するときは「書きテスト」だけすればよい,自学ノートに。

 

5 テスト。1番,何だっけ? 

 

③ 細い糸。

 

6 2番。

 

④ 会長。

 

7 3番

 

⑤ 本体。

 

8 4番。

 

⑥ 魚市場

 

9 鉛筆持って。先生がいちいちみんなの点数を聞くのは大変だから,そこにある紙に自分で点数を書く。丸を貰ったらだよ。

 

 ノートを先生に見せる。「お願いします。」「有難うございました。」「よし,100点。」というようなやり取りで丸付けが進む。

 

「市場の市,ちょっと怪しい人がいるけどなあ……。」「さっさと書いて戻ってね。」などと指示している。「終わったら……。」と言い,終わって何もしていいない子に次の活動を促している。

 

 授業開始から15分が経過した。

 「間違ったら赤で書いておいてよ。100点じゃなかった人を見てあげなさい。」「持って来ていない人がいたら,持っておいでよ。」

 このように指示して,漢字指導を終えた。子ども達の多くは100点で,満足そうである。

 予定通り,15分間で全員の丸付けを終了した。

 

 ここで子ども達が行為化している学習用語は「掌書き」「空書き」である。この2つの学習用語を行為化し,技術としてマスターすると誰でも漢字が書けるようになる。

 学習用語の指導は指導段階と評価段階と行為化段階がある。このように安定的に行為化できるようになると技術としてマスターしたと言える。

 ここで扱った4問は新漢字としては既習である。しかし,この4つの言葉「細い糸。会長。本体。魚市場」での書きテストとしては初めてである。

 テストする言葉を予告してある。それを朝自習の時間で班ごとに復習している。その成果でもある。

 平均点は94点だった。50点1名,75点4名,10021名である。1名欠席していた。

 
 
 2 深層義(書かれていない真意)を読ませる論破指導~メモ,机間巡視,発言,討論のシステムづくり~

 

10 場面3から音読どうぞ。

 

  ⑦ ある日……

  ⑧ すると?

 

11 場面3はどこ。「ある日,ひよことあひるがさん歩に行きたいと言い出した。」続ける。

 

 場面3を教師と子どもが一緒に音読する。

 子どもがわかっていなくても,教師が読み進める。すると子どもはついてくる。「教科書75ページを開く。『ある日』から音読する。始め。』このように指示するのが適切である。しかしいつもこのような指示なので,今日は言い方を変えて混乱させた。いつも同じならつまらないからである。

 

12 よろしい。そこ,1行空いているのに気づかないのか,お前達は。

13 大切な言葉を一つ選べ。選んだら起立。

 

 実に乱暴な話し方である。しかし,子ども達には常体で短く話すのが私の指導言である。そのように保護者にも予告してある。敬体で指導してもよいが,冗長になるので常体の方がよい。私はそうしている。

 起立した子の教科書を見て歩く。10秒間くらいで次の発問に移る。

 

14 「これは変だなあ。」とか「これは大切だなあ。」という言葉に線を引く。まだ座っている人は鈍い。あと3秒。もう座ってよい。じんくん。

 

  ⑪ 神様のような

 

15 先生も神様だ。先生が神様なわけじゃないよ。配ったら何をするの? 詳しく言いなさい。

 

  ⑫ メモ?

 

『文学の読解メモ・マスターカード』を配付する。

このマスターカードは読書感想文を何度も書かせる過程で完成した。読書感想文に書く要素は実にたくさんある。しかし,この作品で何が一番大切か,何が一番わからないかという主題に迫る核心部分を読書感想文で書かせたい。だから,焦点的に主題を暗示している言葉を扱わせるという結論に至った。

 本時では「かみさまみたい」という言葉の真意を考えさせることにした。子どもは狐を「かみさまみたい」だと言うだろ。しかし,それは違うという真意を理解させる。

 

16 「かみさまみたいなお兄ちゃん」,引用。

 

  ⑬ 書けました。

 

17 句点を書くのか書かないのか。

 

  ⑭ 書きません。

 

18 そう,文の引用ではない。だから句点を書かない。出来た人は次に進む。

 

『文学の読解メモ・マスターカード』のラベル欄は左上から「引用」「課題(問い)」「結論+根拠」「結論+根拠」「結論+根拠」「結論+根拠」「結論+根拠」「解決」となっている。

今日で3回目の使用なので,スムーズに書き進める。実に使いやすいマスターカードだ。

 

  ⑭ 本当に神様か。

 

19 そうだ。きつねは神様か? 本当に神様か? という課題が生まれる。

 

  ⑮ 私は神様だと思う。

 

20 どんどん進む子は賢い。私は神様だと思う? 思わない? まだ結論にいっていない人手を挙げる。(3人ほど挙手)

 

個別に指導する。机間巡視で指名計画を立てる。わざと「神様」という意見を拾って,それに反論させる意図で杉原さんを指名した。

 

21 やめ。ひかりちゃん起立。あなたの考えを言いなさい。引用から。

 

  ⑯ 神様みたいなおにいちゃん。本当に神様なのか。私は神様だと思う。なぜなら,優しくしてくれたからである。

 

22 隣に,「ひかりさんは神様だと思う。」と言った。こう書く。

 

 『マスターカード』への記述を指示している。この『マスターカード』の使用は3回目である。したがって,書ける子はどんどん書き進めていく。

 

23 大事なのはその後だ。止め。「ひかりちゃんは神様だ。」と言った。それが○か×か。それを書く。書けたら,なぜなら,と書く。さっさと書く。

 

24 ○,17人。×,9人 合っているか。では,×の人起立。何,言ってんだよ,と反論を言う。

 

⑰ ひかりちゃん,何できつねは神様じゃないのに神様だと言うんですか。

  ⑱ ひかりちゃんは「神様だ。」と言いました。でもぼくは反対です。なぜなら太らせてから食べようと思っているんじゃないですか。

  ⑲ ひかりちゃんに反対です。あなたはちゃんと本を読んでいるんですか。なぜなら,きつねは太らせてから食べようとしているんだから,神様じゃありませんよ。

  ⑳ ひかりちゃんに反対です。なぜなら,きつねは太らせてから食べようとしているから違います。

  21 ひかりちゃんに反対です。なぜぼくが×か,というと,狐は最初のときにひよこをみつけて,太らせてから食べると書いてあります。だから,この3匹とも太らせてから食べようと思っていると思いますよ。

  22 ひかりちゃんに反対です。なぜなら,この世に神様はいません。

  23 ひかりちゃんに反対です。なぜなら,「かみさまみたいな」って言っているから神様ではありません。

 

25 「みたい」って,何? よう,と一緒だから。

 

24 直喩だ,直喩。

 

26 そう,直喩(板書)。さあ,それでは×が正解だな。

 

  25 ええ?

 

 このように挑発すると盛り上がる。授業を盛り上げて,論破を楽しませる。

 

 27 じゃあ仕方ないから,丸の人も少し意見を聞いてあげよう。

 

  26 さおちゃんに反対です。なぜなら,……あれ? 忘れちゃった。

 

 28 だから,言っている人の発言をメモしていくといいんだよ。

 

  27 じゅんじ君に反対です。なぜなら神様がいなかったら命はどこから来たんですか?

  28 昔の人から……。

  29 じゅんじ君に反対です。なぜなら神様がいないと言いましたが,この話は物語だからいるのです。

  30 ×の人に反対です。なぜなら太らせてあげようと考えていたけど,みんなに優しくご飯をあげたりしているから,本当に神様に似ているんじゃないですか。

 

 29 ほら,×の人,反論していいよ。

 

  31 じん君,何言っているんですか? きつねはうさぎとあひるとひよこは食べ物と家がないからきつねの家に来ているんですよ。でもきつねは,食べようとしているんですよ。

  32 でも,だんだん太ってきたと言っているけど,まだ食べようともしていないですよ。

  33 たく君に反対です。太らせてから食べようといいましたね。なぜなら,文に出てきていませんよ。

 

 30 止め。先生は,×だ。……と先生が喋っていることをどんどんメモするんだよ。当たり前だ。きつねはひよこ達を食べないと,生きていけないんだよ。ひよこはえさなんだ。

 

 ここも,抑揚をつけて話し,盛り上げる。例えば,×を強く言う。

 

 31 全員起立。さすが柳谷先生のおっしゃる通りだ,と思う人は○と書けばよい。ちょっと柳谷先生違うなあと思う人は「解決」に×と書く。なぜなら,と続けなさい。ちゃんと柳谷先生に,とつなげなさい。

 

32 まだ立っている人,何をしているの。○か×かをすぐに決めて,座って書く。

 

33 これだけ聞いておくかな。(柳谷先生の)おっしゃる通り。○。14人。ほら,増えた増えた。

 

 20分間の論破なので話し合いはまだ深まっていない。しかし短い時間でも,自分の考えと違う考えがあるのを知るという価値がある。特に教師の意見を言ってからも自分の考えを変えない子どものしぶとさに感心する。子どもが自分の考えを変えるように,さらに強烈な根拠を示した方がよかった。

 論破は他者の発言に学ばせる価値がある。教師の解を明示すると,解が違っていた子は,さらに自分の考えを吟味し出す。だから,教師の解を明示するべきである。

 

3 学習用語を使った論破を書かせる読者感想文指導

 

34 ノート。今のメモを見ながら,きちんと文にするんだよ。何から書くの?

 

  34 引用。

 

35 何から書くかよくわからない人は先生が書くのを見なさい。ゆうなちゃんとえりかちゃんは自学のノートに上手に復習して書いていた。そういう人は,どんどん自分で書いていきなさい。わからない人は黒板を途中まで写しなさい。

 

  35 引用?

 

終了10分前である。時間通りに授業が進んでいく。

 

36 「引用」とか,そういうラベル欄の学習用語は直接書かない。

37 「かみさまみたいなお兄ちゃん」本当に「かみさま」か。私は~。私は神様だと思う,とか,私は神様じゃないと思う,とか。

 

38 ひかりちゃんが言った,とか書けばいい。

 

39 大君。会話文のかぎはどこに書くの?会話文のかぎは一ます目。どんどん書きなさい。

 

 子どもが書き進めてから,10秒くらいしてから教師も板書する。すると,自信の無い子は書き方を学びながら書ける。自信のある子は,すでに書き進めているので,教師の板書を気にせずに書き進める。

 机間指導をして個別指導をしている。「なぜならは小段落にするの? しないよ。」「会話文の下,続けたらだめだよ。ひとマス目にかぎを置くんでしょう。」などと小さな声で個別指導している。

 

 板書 

(ひかりちゃんに)

○ 17人  

× 9人

 

 みたいー直ゆ

 

 かみさまではない。

○ 14

× 12人  

 

「かみさまみたいなお兄ちゃん」

 本当に「かみさま」か。私は~

 ひかりちゃんが言った。

 

 40 あやちゃん,起立。読む。

 

  36 神様みたいなお兄ちゃん。ひかりさんが言った。なぜならご飯を食べさせていたからだ。私はひかりちゃんに賛成だ。なぜなら,きつねは優しくしていたからだ。だから,先生の結論には反対だ。

 

41 たく君。

 

  37 神様みたいなおにいちゃん。本当に神様か。私は神様だと思わない。なぜなら太らせてから食べるから神様だと思わない。ひかりちゃんが言った。神様だと思う。私は×だ。なぜなら,きつねはひよこを食べようと考えていたからだ。

 

42 自己評価。

 

  38 私は80点だと思います。なぜなら間違ったりしたからです。私の考えは変わっていません。そのまま×です。でも,私は変わったと思います。

 

  39 私の考えは最初○でした。だけど,みんなの意見を聞いていると×かなあと思いました。だから考えが変わりました。

 

43 意見が○なら○でよい。人の意見を聞いて考えが深まったら,変わったことになる。

 

  40 私の考えは変わっていません。なぜなら本当に神様だと思うからです。

 

  41 私は自分が変わったと思います。なぜなら人の意見を聞いていたら,私の考えが深まったり広がったり……。

 

44 具体的にどうなのか言う。先生が反対したから,ますます思いが強くなったとか。

 

  42 私もみんなの考えを聞いていて深まったと思います。ひかりちゃんが神様だと言ったから深まったと思います。神様だと更に思いました。

  43 私の考えは最初○でした。でもみんなの意見や先生の意見を聞いて,少し深まって,×が正解なのだと思いました。

44 私は柳谷先生が,×だとおっしゃったとき,私は,きつねは本当に神様じゃないとわかりました。だから考えが深まりした。

 

  45 姿勢を正して,礼。

 

 この1時間を通して,自分の結論が深まった,広がった,多くなったのであれば,私は,この1時間で伸びたと言える。○から×へと意見が変わったのか変わっていないのかというのではない。自分の考えが深まった,多くなった,広がったということなの。そうなると,私は伸びた,変わったと言える。このような話をして終えた。

向上的変容という学習用語をきちんと指導していないと反省した。今後の自己評価では,一時間に学びがあれば伸びたといえると指導していこう。

 ここでは「引用,課題,結論,根拠,解決」などの学習用語に分類して書くという行為化をさせた。さらに論破の学習用語を指導し,それを使った野口流・発言技法を鍛えていく。